外国出願
(1) 外国出願の基礎知識
1.外国に出願するには
現在、特許制度は国ごとに法律が定められており、国ごとに出願をして特許権を取得する必要があります。外国に出願するには、以下の4つのルートがあります。
(1)パリルート
パリ条約に加盟している国に出願する場合、日本国出願を基礎として1年以内(意匠,商標は6か月以内)にパリ条約に基づく優先権を主張し、現地の言語によって書類を作成し、現地に直接出願します。
優先権を主張することによって、新規性、進歩性などの特許要件の判断基準日を「日本国出願の日」として審査を受けることができます。
(2)PCTルート
国際特許協力条約(PCT)に加盟している国に出願する場合、日本語または英語によって書類を作成し、PCTに基づいて日本国特許庁に出願します。
PCTルートの場合、1つの手続きで複数の国に対して出願することができます。また、1年以内の日本国出願がある場合、パリルートと同様に優先権を主張して出願することができます。
(3)EPCルート
欧州特許条約(EPC)に則り、1つの特許出願(EPC出願)を欧州特許庁(EPO)に出願します。
(4)直接ルート
現地の言語によって書類を作成し、現地に直接出願します。
尚、各国で審査を受けるためには、出願後に現地の言語による翻訳文を提出する必要があります。(1)~(4)のいずれの出願の場合であっても各国で独自に審査を受ける必要があり、各国の現地代理人に手続きを依頼することになります。
2.外国出願すべきか
海外ビジネスの展開を考えている場合、模倣品に対処できるように外国出願を行うことが望ましいです。 しかしながら、外国出願は国内出願に比べて高額になります。外国出願の場合、翻訳費用がかかる上、現地代理人の費用も発生するからです。
従って、現地でどの程度の収益が見込めるかを見極めて、外国出願すべきか慎重に判断する必要があります。そこで、以下のフローチャートに示すように、製品の販売実績を考慮して、2段階で外国出願すべきか検討することが望ましいと思います。
注意すべきことは、
・製品を販売する前に、国内出願を行うこと
・国内出願から1年以内に、優先権を主張してPCT出願すること
の2つです。
PCTルートの場合、パリルートと異なり、翻訳費用や現地代理人の費用が国内移行手続き時に発生しますので、出願時の費用を抑えることができます。また、PCTルートの場合、国内移行手続き時に実際に審査を受ける国を決めることができますので、ビジネスの状況に応じたフレキシブルな対応ができます。
3.出願から登録までの流れ
出願から登録までの流れは、利用する制度、出願する国によって異なりますが、出願後の大まかな流れは国内出願とほぼ同じと考えて良いと思います。
最初に審査官によって審査がなされます。拒絶理由があれば拒絶理由が通知され、出願人は拒絶理由を解消するために補正書や意見書を提出できます。拒絶理由が解消されれば、登録料を支払うことで特許権が設定登録されます。