実用新案

(1) 実用新案制度の基礎知識

1.実用新案とは

「~に窪みを設けて持ち運びを容易にした」など、さほど高度ではなくても有用な創作(考案)を行ったときは、それを実用新案権によって保護することを考えてみましょう。 実用新案は、特許と同様、有用な創作を保護するための権利です。なかでも特に、物品の形状や構造またはその組み合わせに関する考案を保護するためのものです。

実用新案は特許と比べ、
 1 「発明」ほどは高度でない「考案」を対象とする点 
 2 物品の形状や構造またはその組み合わせを対象とする点において大きく異なります。


まず、特許が「発明」を対象とするのに対し、実用新案では「考案」を対象とします。「発明」と「考案」の違いはその高度さにあります。すなわち、特許では保護されないような、高度ではなくても有用な創作(考案)も実用新案の制度で保護することができるのです。
しかし、実用新案の保護対象は限られ、物品の形状や構造またはその組み合わせが対象となります。特許においては対象となる、方法やコンピュータプログラム、その他一定の形状を有さないもの等は実用新案によって保護することができない点に注意してください。

2.実用新案 出願から登録の流れ

実用新案の出願には、
・実用新案登録願:出願人及び発明者の氏名や住所など
・明細書:考案の内容を記載
・実用新案登録請求の範囲:取得したい権利の範囲を記載
・図面:考案の内容を説明するための図
・要約書:考案の内容を簡潔に記載
が必要です。

以上の書類を特許庁に提出し、出願手数料と3年分の登録料(約2万円程度~)を一括納付します。
書類の記載に不備がないかどうか等の方式審査と、考案の内容が物品の形状に関するものかどうか等の基礎的要件の審査が行われます。
これらの条件を満たしていれば、実用新案権の設定登録が行われ、考案に対する権利が与えられます。
書類に修正可能な不備があれば、補正を行って不備を解消した後に、設定登録が行われます。
実用新案権の設定登録が行われれば、登録実用新案公報が発行されます。

3.実用新案権のメリット ~ 特許との比較

実用新案権の主なメリットに、
 1 特許に比べ早期に権利を取得できる点 
 2 特許に比べ権利取得にかかる費用が低い点 

があります。

おおまかにいえば、特許は 出願→実体審査→登録 という過程を経て権利取得を行いますが、実用新案は 出願→登録 の過程で権利取得を行うことができます。そのため、
 ・実用新案では実体審査が行われないぶん、権利取得に対する期間と費用をカットすることができます。
 ・約2~4ヵ月と早期の権利取得が可能であり、権利取得にかかる費用も2万円程度(書類作成料除く)と抑えることが可能です。
したがって、特許に比べ高度ではない考案の場合以外でも、とりあえず早期に権利を取得したい場合や、低コストで権利化を図りたい場合に有効です。 

 特許実用新案
実体審査ありなし
権利取得までの期間内容や審査状況によるが
1~5年程度
 約2~4ヵ月程度
権利を維持できる期間出願日から20年出願日から10年
特許庁に収める費用(※)約17万円~約2万円~

(※)・特許事務所 手数料は含みません
   ・請求項の数により金額が加算されるため、幅があります

4.実用新案権の活用法

例えば玩具など、商品サイクルの早いものに関する創作の場合、これを特許により権利取得しようとすると現状では通常数年間かかることになります。そのため、権利取得した発明に関する商品が既に流行遅れとなっていたり、陳腐化していたりして折角の権利も行使する機会が無くなってしまっている可能性があります。
実用新案権は早期に権利取得ができるため、このような商品サイクルの早いものに関する考案については、実用新案権を取得することで新たな考案を早期に保護することができます。
取得した権利は、特許権と同様、第三者に対するライセンスを行ったり、他者の無断実施を防いだりすることができます。
また、実用新案権に基づいて特許出願を行うことも可能(ただし、実用新案登録出願から3年以内)ですので、事業化したものなど価値のある高度な考案については改めて特許を取得することも可能です。

5.実用新案権の効力

実用新案の効力について重要な点は、権利を取得してもその有効性について不確かであることです。これは、実用新案権制度では考案の内容についての審査(実体審査)が行われずに権利が設定登録され、特許のように実体審査の過程でその有効性について客観的な判断がなされないためです。 そのため、実用新案権は、権利の行使に特に注意を要する というデメリットがあります。

例えば実用新案で保護した考案が他者に無断で使用されており、それを防ぐために実用新案権を行使する際には、その有効性をまず示さなければなりません。このため当事者は、その考案に対する「実用新案技術評価書」を特許庁に請求し、これを他者に提示して警告を行う必要があります。
有効でない権利を他者に行使してしまうと、例えば無効審判を起こされてその実用新案権が無効であるとされたり、権利の行使により損害が与えられたとして逆に損害賠償を請求されたりする可能性もありますので、注意が必要です。

6.実用新案調査

特許調査と同じく、下記サイトで過去に出願された実用新案を調べることができます。

特許情報プラットフォーム(J-Plat Pat):
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

実用新案権の行使の際は、特許庁に「実用新案技術評価書」を請求し、その考案の有効性を示さなくてはなりません。考案の有効性を評価する場合には、特許における実体審査と同様に、その新規性進歩性が重要になります。これらを満たしていないと、権利の有効性について否定的な内容の評価書が発行される可能性があります。そのため、実用新案権を取得する場合にも、その考案が従来技術ではない新規なものであるかどうかや、従来技術に比べて進歩性を有するものであるかを、事前にしっかりと調べておくことが重要です。

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